飲食店が赤字になった時に銀行に対して配慮するべきこと

銀行から融資を受けている飲食店の事業主が、その事業で決算が赤字になっている時、どんな対応をしたらいいでしょうか?

決算が赤字という状態はその年度の事業で利益が出なくて、銀行に対しては借りている融資の返済の財源がないという状態を示しています。幸い手持ちのお金があって、すぐには返済に困らないものの赤字の状態が続くとやがて資金繰りが厳しくなってきます。それは毎日の事業に使うお金が不足するだけでなく、当然銀行への返済も滞るようになってくることを示しています。

そのようなことが起こった場合、あるいは起こらないように事業主はどのように対応していったらいいのでしょうか、決算が赤字の場合の銀行への対策を元銀行員の筆者とともに考えてみましょう。

赤字の性質を見極める

赤字の状態には二つあると言われています。それは「一過性」か「慢性的」であるかということです。

「一過性」というのは、赤字が特殊な要因に基づくもので、その原因さえなくなれば決算は再び黒字にできる状態を言います。例えば売れない不良在庫を抱えてしまって一度に損金として処理したなどの場合です。一時的に赤字にはなりますが、翌期からは黒字転換の可能性があります。

一方、「慢性的」とは事業そのものが利益を出せない状態に陥ってしまっており、いくら期を重ねてもどんどん赤字の幅が膨らんでいくだけの状態を指します。利益が出ないので、いずれ会社内で資金が枯渇して補充ができなければ倒産に至ります。一過性に比べて大変深刻な状態です。

事業主は自分の事業がどちらの状態か、真剣に見極めねばなりません。

慢性的な赤字を放置すると

一過性の赤字の場合は原因が特定できているので、それをうまく切り抜ければ黒字に転換できる見込みも立ちますし、事業主も銀行にもその原因や対策を説明できるでしょう。銀行も納得さえすれば、普段通り融資の相談にも乗ってくれます。

問題は慢性的赤字の場合です。

もちろん1期でも赤字の状態になることは好ましくはありませんが、それが2期3期と重なってくると、さすがに銀行としても心配しないわけにはいきません。なぜなら、それは創業時に事業主が用意した事業資金がどんどん事業から外に失われている状態だからです。最終的に外部から資金が調達されないと、資金がなくなって倒産してしまいます。当然銀行としても貸したお金が回収できなくなるので困ります。

赤字を解消する方法

慢性的な赤字ということは飲食業からの利益が出ていませんので、何らかの対策を早急に打つ必要があります。

例えば販売戦略の変更としてはメニュー全般の見直し、目玉商品の開発、販売方法の修正などが考えられます。しかしそのような対策を取っても赤字が解消しない場合は、ついには各種経費の見直しが必要になります。例えば仕入先に無理を頼んで仕入価格を下げるとか、従業員数の見直しや給料カットなどにもメスを入れなくてはならなくなります。毎月支払いしている銀行融資の返済にも手を付けざるを得なくなるでしょう。

ではどこから事業主は手を付けるべきでしょうか、大変難しい問題です。下手に仕入先単価の引下げや従業員の給与カットに手を付けると、仕入先が納品をストップしたり従業員が辞めてしまってお店そのものの運営が立ち行かなくなる可能性があります。

そのため事業者としては安直な方法としてまず銀行の支払いをストップすることを考えます。しかしそれが必ずしもいい考えでないことを説明します。

銀行に事前に相談することの重要性

毎月コツコツと返済が進んでいたのにある時から返済が遅れ始め、ある日を境にピタッと返済が止まったと想像してみて下さい。しかもその説明が事業主から全くありません。

もし事前に事業主から何らかの理由で「返済が苦しくなりそうだ」との告知があれば、銀行も事業主と相談の上でそれなりに対策もとれます。例えば返済期間を延長して毎月返済額を減らしたり、元金の返済を据え置いて金利のみ払ったり、少額を毎月でも支払ったりと、返済方法を変えることだけでも対策は色々可能なのです。

ところが、事前に何の相談もなく事業主が勝手に返済を中断し、さらに入金の督促を無視・放置していると数か月後には「期限の利益を喪失」してしまいます。この期限の利益とは事業主の利益のことで、要するに返済をちゃんと実行している限りは、銀行から一切元金の一括返済を求められないというのが期限の利益です。

しかし延滞状態を数か月放置すると、「期限の利益を喪失」し、事業主は銀行から融資金の一括返済を求められてしまうのです。もうこうなってからでは遅いです。銀行としては貸金回収のための法的手続きに入ってしまいます。

経営が赤字状態で資金繰りが厳しくて延滞を起こす前にぜひ事前に銀行に相談に行く勇気をもってもらいたいと思います。

銀行が取れる対策

銀行としても融資先から相談を受けた以上、何とかして協力しようと努力します。もしその銀行が融資先のメインバンクならなおさらです。簡単に融資先を見放すことで潰してしまえば自行の融資も回収できません。もちろん赤字の内容次第ですが、何らかの対応は考えてくれます。ただ事業主が銀行と話をするときにやってはいけないことは、赤字の原因を景気のせいにすることです。これでは銀行には「この経営者には赤字改善の努力を全く期待できない」と思われてしまいます。赤字の原因を分析して、必ず具体的な改善策を用意して銀行交渉に臨みましょう。

銀行が協力できる対策として一番オーソドックスな方法は、前に述べたようにリスケジュールです。要するに支払い条件を緩和して、毎月返済額を少なくし、その事業者が事業を回復させるのを待つのです。

また銀行は売上げ減で赤字の状態にある事業主に信用保証協会のセーフティネットという特別な融資制度をあっせんすることで、追加融資に応じてくれるかもしれません。

経営安定関連保証(セーフティネット保証)
http://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/keiei-shisho.html

それでも慢性的な赤字が続くと

こうした銀行の協力にも関わらず、もしその赤字の状態が続き今後も回復の見込みがないのであれば、さすがに銀行としても民間会社なので、「融資金の回収」を前提とした方針に切り替えざるを得なくなります。具体的には追加融資をストップし新たに事業主から担保を入れさせたり、金利を引き上げたりします。

担保を追加させることを保全強化と呼び、まさかの倒産に備えます。あるいは融資金利を引き上げることで融資元本の早期の回収を図ります。
赤字の事業主に対する対応は個々の金融機関がその事業者の事業をどう判断するかにかかっていると言えます。ただ回復の見込みがある限り、簡単には銀行は事業主を見放さないということは理解しておいてください。

一方赤字に陥っている事業主に心してもらいたいことは、資金繰りが苦しくなる前に必ず事前に対策を銀行と相談してもらいたい、勝手に単独で判断しない、これに尽きると思います。