飲食店におけるコーヒーに対するさまざまな考え方

飲食店で「コーヒー」が選択肢にない、というところはほとんどないのでしょうか。喫茶店はもとより、居酒屋などでもコーヒーがメニューとして出ていますし、コンビニなどでもコーヒーが売られています。

さて、このようにメジャーな飲み物であるコーヒーですが、飲食店を経営していくこの「コーヒー」をどう考えたらよいのでしょうか。

コーヒーの利益率を考える

コーヒーは、利益率が非常に高い飲み物だと言われています。喫茶店で1杯あたり600円程度で提供されているコーヒーの原価率は、120円程度だと言われています。しかもこれは一般的な価格で買った場合の金額ですから、実際にはもっと安くなります。大量に仕入れをしてそれをさばくことになるからです。

このように考えると、コーヒーを取り入れることは飲食店において大きな意味を持つと言えます。しかし、喫茶店などを例にとればわかるように、実際にはそれほど多くのコーヒーを1人のお客様が飲んでくれるわけではありません。そのため、居酒屋で出すお酒などに比べると、あまり量がはけないと考える向きもあります。

高いコーヒー、安いコーヒー

さて、このコーヒーですが、これはお店によって値段が大きく違います。これにはもちろん理由があります。高いコーヒーというのは、多くの場合グレードが高いコーヒー豆を用いています。またそれをいれるためのスタッフも、バリスタに代表されるように高い技術を持っていることが多く、賃金が上乗せされることもあるでしょう。

また、味が濃厚な深入り豆を使っている場合も値段が高くなります。これは、「豆を深入りすると身が縮んでしまう。そのため、使う豆の量も増えてしまいがち。また、焙煎をするときにガス料金などがかかってくるから」というのがその理由なのだそうです。

名古屋では、モーニングサービスとしてコーヒーにパンなどが付くことで有名です。それが終わっても、ランチタイムやティータイムにケーキなどの軽食がつくことが多いと言われています。

これはお客様にとっては非常にお買い得なのですが、同時に、「それらをつけても利益が出るように」と調整する必要がでてきます。そのため、コーヒー自体の品質を少し下げてバランスをとっているところも多いようです。

このように、コーヒーの値段には理由があります。

神戸で出会った2つのお店

コーヒーの話をするとき、私は10年以上も前に訪れた神戸の街を思い出します。まだ18歳くらいだった私は、当時、「コーヒーは苦いもの」という印象しか持っていませんでした。今では信じられないことですが、ケーキにもココアをあわせていたほどです。

そんななかで訪れた、神戸の街。そこで私は2回ほどお茶をしました。1軒目のところはケーキを頼んで、飲み物は自分で入れる形でした。紅茶とコーヒーしかなく、当時紅茶も飲めなかった私はしぶしぶコーヒーに…。

しかしこのコーヒー、忌憚のない意見を言えば、とてもとてもまずかったのです。砂糖やミルクを入れても飲み切れずに、残してしまった覚えがあります。喉を突き刺す酸味、妙に舌に残る苦味、そしてまったくしない香り…。紙コップで一杯100円でした。

さて、次に行ったのが、同じく神戸のコーヒーショップ。1軒目でこりごりだ…と思っていた私でしたが、同行者が「どうしても!」というのでつきあったのです。コーヒー一杯700円と、当時の私には非常に高額でした。

しかし、そこで飲んだコーヒーは、私の知っていた「コーヒー観」をまったく変えてしまいました。一口口に含んだ瞬間に広がる豊かな香り、コーヒーだけが持つほろ苦さ、そのなかでも飲みやすさを感じさせてくれる酸味…。それらが一体となっていて、今まで飲んできたコーヒーとはまったく別物であることが、まったく味のわからなかった私にも伝わってきました。

このお店のコーヒーとの出会いが、「コーヒーはおいしいものなのだ」と私が思うようになったきっかけでした。自分で好きなカップを選び、ゆっくりした時間のなかでおいしいコーヒーを飲む…。その喜びは10年以上経った今でも私の心のなかに息づいています。このコーヒーとの出会いが私を変え、コーヒーの資格をとることにまでつながりました。

ただこの例をもって、「これが飲食店で出すコーヒーの理想だ」ということはできません。コンビニで販売されているコーヒーを例にとってもわかるように、現在はローコストでも非常においしいコーヒーが出ています。また、コーヒーのハードユーザーでないのであれば、「コーヒー1杯分の値段で軽食までつく」という名古屋スタイルのコーヒーはとてもありがたいものでしょう。

コーヒーの出し方に正解はありません。ただ、「自分の飲食店の方向性はどういったものか」「中心となる客層はどうなのか」「自分がやりたいことは何なのか」をきちんと考えることで、そのお店にあった「正解」が見えてくるでしょう。また、どんな結論が出たとしても、経営的に許される限りのよい豆を使い、よい技術で入れましょう。