飲食店の経営方法~「ドリンクを頼んで」は強制力がある?

飲食店を経営している人にとって、「ドリンク」は少し特別な意味を持つ単語です。こと、「儲け額」ということを考えたとき、ドリンクのそれは非常に大きいものだからです。

ただ、「ドリンクを頼んでほしい」ということには、強制力はあるのでしょうか?
それについて見ていきましょう。

「お一人さま一杯のドリンクをお願いしています」と言っていないか?

飲食店、特に居酒屋を経営している人の場合、従業員用のマニュアルに「ドリンクの注文をお願いするように」と書いた、というケースは多いのではないでしょうか。また、メニューブックの片隅に、「お一人さま一杯のドリンクの注文をお願いします」と書いてある、というお店もあるかもしれません。

この理由は、飲食店を経営している人ならばだれでもわかるでしょう。ただここでは、理論のおさらいとして、ここからお話ししていきます。

お店によって多少異なりますが、飲食店全体の原価率は、だいたい30パーセント~48パーセント程度だと言われています。かなり開きがありますが、だいたい3割~5割程度の原価率でお店は回っています。
ちなみに、非常に話題になった「俺のイタリアン」の系列店は、原価率が60パーセント程度だと言われています。

原価率は、低ければ低いほどよいというものではありません。原価率の低い飲食店は、最初の1~2回はお客さまが来てくれたとしても、「あそこは値段の割には味が悪い」「原材料をけちっているのがわかる」という悪評が立てば、リピーターにはなってもらえないからです。

ただ、それでも、原価率が低い飲食物は飲食店にとっては非常にありがたいものです。

そこで出てくるのが、「ドリンク」です。

ものやお店の方向性にもよりますが、一般的に、ドリンクは食べ物よりもその味の差を求めるお客さまは少ないと言えます。そのため、食べ物に比べて原価率を押さえるデメリットが少なく、飲食店にとっては良い稼ぎ頭となってくれるわけです。

飲み物の場合、原価率は、高いものでも30パーセント程度だと言われています。原価率が低いもの、たとえばサワーやコーヒーなどは原価率が低く10パーセント程度が目安です。

このようにして、「数字」から見ていけば、飲食店側がドリンクを勧めたくなるのはある意味当然のことだと言えるでしょう。

法律的な観点から考える、「ドリンク注文の強制力」

多くのお客さまは、飲食店側がドリンクの注文をお願いすれば1~2杯は注文をしてくれることでしょう。
しかしごくまれに、「お水をお願いします」というお客さまもいらっしゃいます。飲食店側から見ればドリンクは利ザヤの多いものではありますが、お客さまの立場から考えたら「原価率が低いもの」になってしまうため注文するメリットが低いのです。ドリンクを頼むくらいならば、料理を1品増やしたい、と考える人がいるのも道理です。

この場合、問題となるのが、「ドリンク注文をお願いすることには強制力があるのかどうか」ということです。

法的な解釈をした場合、ドリンクの注文を「お願い」することはできても、「強制すること」はできないと言われています。なぜなら、料理の注文もまた「契約」だからです。
契約には、お互いの間での合意がとれていなければならないという原則があります。このため、店側が「ドリンクを注文してくれ」と言っても、お客さまの方で「嫌だ」と言われてしまえば、その契約はなりたたなくなってしまいます。

どうしてもドリンクを頼んでほしい場合にはどうするか

では、どうしてもドリンクを頼んでほしい場合はどうすればよいのでしょうか。

実は、メニューブックや店頭にこれを掲げていたとしても、お客さまがそれに応じなければならない義務はありません。そのため、店側がとれる対策は、以下のうちのどちらかでしょう。

・水を有料にする
・ご退店願う

この場合、後者のご退店をお願いするのはかなり強硬な処置方法だと言えます。しかし、法的に見れば可能ではある、と解釈されています。「ドリンクを頼むこと」に両者の合意が必要ならば、「料理を出すこと」に対しても店側の意思が反映される余地があります。

ただ、この方法はかなりのリスクも伴います。今はインターネット社会ですから、「ドリンクを断ったら入店自体を断られた」ということで、悪評が立ってしまいかねません。特に、そのお客さまが、「ドリンクを頼まなかったこと以外には、特に問題となるような行動はしていなかった」という場合ならばなおさらです。

そのため、角を立たせないやり方としては、水自体を有料にすることの方がよいかもしれません。ただ、日本は、「水は無料」という文化であるため、これについても強い抵抗感を覚える人がいるのも事実です。もし水でお金をとるということであれば、いわゆるミネラルウォーターなどのボトルウォーターを提供する方が、リスク回避になると思われます。