開業するためには飲食店での現場経験が必要なのか?

飲食店を開業するにあたり時間をじっくりかけながら様々な準備をする必要がありますが、そもそも経営者自身が飲食店での現場経験が必要なのか、つまり、どこかのお店で何らかの現場経験を積んでおくべきなのかについて、案外迷われるケースが多いようです。

どこかの企業がこれまで行ってきた事業内容に加え新たに飲食事業に参入したり、個人で飲食業をスタートする人でも資金的に相当の余裕があって調理担当者だけでなくお店全体のマネジメントを担当するスタッフまでも雇えるような例外的なケースは別として、脱サラした方々など一般的な個人での経営というスタンスで開業する場合、現場経験は絶対に必要ですし、強くオススメしたいポイントでもあります。

今回はその理由についていくつか事例を挙げながらお伝えしたいと思います。

どんなビジネスでも未経験で出来るはずがない

まずは飲食店に限った話ではなく、そもそも未経験の業界でビジネスをスタートすること自体が無謀です。何の経験もないのに成功できるかも・・・などと考えがちになってしまうのが飲食店ビジネスの危ない所でもあります。

飲食業は、料理の味やオーダーしてから運ばれてくるまでの時間、接客態度、お店の雰囲気や清潔感など、目で見て感覚で感じられる部分が多いですし、そもそも「食」というのは人間にとって非常に身近なものです。

消費者として利用すれば飲食店の多くの要素が見えるような気になりますが、肝心なことは実は一切見えません。見えないというより、あまりにも経験がなさ過ぎて見るべきポイントがわからないのです。それなのに多くのことが理解できたような気になってしまいがちになることは決して好ましい状況ではありません。

いくら経験者から貴重な話を聞いても肝心なことは結局理解できない

ヤフー知恵袋などに、これから飲食店をスタートするつもりの方々が質問されているのを見かけます。それに対し調理経験者や店舗マネージメント経験者がかなり突っ込んだ内容を回答し、「その考え方だと失敗のリスクがありますよ・・・。」と伝えているのですが、それに対する未経験質問者の返答を見ていると彼らが伝えたい危機感のレベルが全然伝わってないな、と思うことが多いです。

それは未経験者である質問者が悪いわけではなく、未経験であるがために大事な部分を感じ切れないのが原因です。結局は現場経験の差です。

飲食業界での経験が長い人でも調理経験がない人はたくさんいます。逆に、調理経験が長くても接客対応やお店のマネジメントに経験がない人も多いです。彼らは飲食店を運営するにあたって大事な要素の全てを経験できているわけではないですが、現場での経験を通じて「現場感覚」というものを肌で感じてきてますし、その上で自分に何が足りないのかをきちんと理解できています。さらにそれを補うために誰かを雇用した時もどう接するべきかもわかっているのです。

つまり畑は違えど同じ土俵の上で話ができるのですが、飲食業の現場経験がまるっきりない場合、重要な部分に関しての危機感が本当の意味で共有されることの無いまま開業に突き進んでいくことになります。何か取り返しのつかない事態になってその深刻さに初めて気付く結果になる可能性は非常に高いと言えます。

行き詰って改善策が必要な時の引き出しがない

どんなに成功した人でも、そこまで何の問題もなく突き進んできたわけではありません。必ず壁にぶつかっています。その時、必ず改善策が必要になります。その改善策は最終的には経営者がひねり出すなり決断するなりしなければなりません。

ところが現場経験がないと有効な策を打てないのです。勿論、何とかしようと努力しそれなりの対策は講じるのですが、結局のところ現場経験の無さが災いして考え出せる改善策候補の数が圧倒的少なく質も著しく低いのです。

その中から何とか選択した改善策となりますので、現状を打破し繁盛店へ突き進んでいけるような効果的な内容でないことがほとんどです。最終的にはジリ貧の状態が続き売り上げが減少していく中で当初の資金も底をつき店をたたむ・・・という最悪のシナリオを自ら手繰り寄せてしまう結果になっていくことがほとんどです。

現場経験こそが経営者の身を守り成功へと導く

脱サラした方々などは「今更飲食店なんかで修業できるか」というような心理も当然働くでしょうし、できれば現場経験なしで開業してやっていきたいと思うのはよく理解できます。

しかし飲食店の経営はビジネスです。皆さんの貴重な資金を大量に投下してスタートしていくものです。「食」という身近な業種だからと言って成功に近いというわけでは決してありません。

成功するためと割り切り、明確な目的意識を持った上で現場経験を積めば非常に多くのことを学ぶことができます。その学びは様々な場面、特にビジネスが苦しい局面を迎えた時にこそ効果を発揮することになります。

現場経験を含めた開業準備を中長期で捉え、確実に必要なことをこなしていくスタンスを採り、ぜひとも成功を掴めるビジネス体質を整えて開業を迎えていただきたいと思います。