銀行の評価を下げる経営者(その1)

事業をしていると経営者は銀行を含む多くの金融機関と融資を通じて関係を持つようになります。いわば銀行や信用保証協会、日本政策金融公庫などは事業主の経営のパートナーと言えます。本来なら日頃からこれらの組織と円滑な関係を保って事業資金を借りたい時にスムーズに融資を受けたいものですね。

ところが事がうまく運ぶよりむしろ困難なことが多いのが融資です。融資の場面では事業主と銀行の間で感情面も含め色々な対立も起こります。そこをお互い相手に敬意を払いつつうまく収めることができれば理想ですがそううまくはいかないのが現実です。
もし事業主が交渉で感情的になり、時には激怒して、銀行に悪い印象を与えるとその後の融資結果にも響くことになります。そんな場面でも銀行員は冷静に相手の行動や言動をチェックしています。

これらは一例ですが、この記事では地方銀行で30年勤務歴を持つ筆者から見た「銀行の評価を下げる経営者の姿」をまとめてみました。どのようなタイプの経営者が銀行に嫌われるか、融資面でマイナスに働くかを読者ご自身が銀行員になったつもりでチェックして下さい。

あいまいな説明を繰り返す経営者

融資の決定は最後は銀行員と言う人が決定します。機械で自動的に決まるようなものではありません。そこに人間の判断が入る以上、当然感情も入ります。しかし融資はその事業の命運を左右するので、銀行員もできるだけ感情を排して客観的に数字に基づき判断しようと努力しています。

その判断の根拠になるのはやはりその事業の過去の成績を表す確定申告書や決算書です。しかしそれらの書類はしょせん過去の業績です。仮にこれまでの業績が良かったとしてもそれは過去の話でこれからのその事業の未来を示すものではありません。

銀行員は過去の業績の分析は得意でもその事業の未来を予想するのは不得手です。そのため経営者と面談して経営者に「その会社の将来」を語ってもらい融資判断に活かそうとします。

ところが経営者の中には自分が事業に直接関わっているにもかかわらず、自分の事業がどの方向に向かっているのか、どんな状態なのか、数字できちんと説明できない人がかなり多いです。

わずか1年先の売上高や利益の見込みでさえ銀行員に数字で語れず、「よく分からない」とか「景気次第」を平気で口にします。その状態を恥とも思っていません。

銀行員は自分の事業さえろくに把握できていないこのような経営者に融資をしたいと思いません。アバウトでもいいので1年後の自分の事業の姿をきちんと数字で示せる事業者になって下さい。

決算書・確定申告書を銀行に出すことを渋る経営者

筆者のように長年銀行の営業の最前線に立ち多くの取引先を担当していると、常に個々の融資先に「最新の決算書・確定申告書」の銀行への提出をお願いしたものでした。

当然ながら融資は実行したらそれで終わりというものではありません。長期資金を実行したらその後、延々と返済が続きます。その間、銀行としても融資先の業況の変化には常に目を配っていないと、突然倒産や廃業などで融資が回収不能になっては困ります。

その業況の把握のためにも、融資先で決算期が過ぎ新しい決算書・確定申告書ができたら、早めに銀行への提出をお願いしています。ところがこの依頼が担当者には悩みの種にもなっています。

経営者の中には一度融資を受けたら後は終わりという考えをする人がいて、銀行からの要請に対し「今、金を借りるつもりもないのになぜ新しい決算書をわざわざ出す必要があるのか」と提出に抵抗する人がいるのです。あるいは頑として決算書の提出を拒む人もいます。

銀行としても本当にこういうタイプの経営者が困ります。銀行としては融資の管理の点からその都度の決算書類の提出は必要なのですが、いくら銀行が説明しても頭からそれを理解しようとしない経営者がいるのは本当に困惑します。

もちろん銀行と言っても民間会社に過ぎません。あまり強く要求するとそういう経営者に限って「それなら融資を返済する」と気色張りますし、返済されて金利が入らなくなっても困りますので、どれだけ交渉しても決算書を出してくれない経営者には銀行も無理強いはしません。しかし銀行の中ではそのような経営者は完全に信用を失っているので、次に事業で追加融資が必要になって経営者が申し込みしても銀行は良い返事はしないでしょう。融資が返済により完全に終わればその取引先との取引も自然になくなります。

一方では、今期の決算が仮に赤字であっても、銀行にきちんと毎回決算書を出せる経営者はそれだけで信頼に値すると銀行は判断するし、さらに決算書の更新ごとに経営者自ら銀行に決算書を持参し内容の説明をしている経営者はさらに評価が高くなると思ってください。当然、融資判断にもプラスに働きます。

融資契約があるのに「決算書を出さない」など、意味のない抵抗は融資において事業主の首を自ら締めることにもつながるという自覚が経営者には必要です。

銀行との約束事を平気で破る経営者

事業主と銀行はいわば経営のパートナーです。その両者の関係はすべて約束事で成り立っています。融資の交渉において、いつ何時にどこで集まって話をすると決めたとします。それぞれが忙しい中、時間をやりくりしてその場に銀行員が行ってみると経営者が来ていません。いくら待っても経営者からいつ着くとの連絡もありません。こんな時、銀行員だけでなく普通の人でもどう感じるでしょうか?

そのような相手をビジネスの相手として本当に信頼できるでしょうか?一時が万事です。

返済日を守ってきちんと融資の返済をするのも融資先が銀行と交わした約束事です。ところがこのような経営者は融資が実行されて、その後の返済が少しくらい遅れても全く気にしません。

銀行から何度も督促の電話を受けてやっと口座に入金する始末です。しかも銀行に入金したという連絡さえしません。そのため銀行からわざわざ時間を作って口座の入金確認までする必要があります。

しかも1回ならいざ知らず、それがほぼ返済日毎に繰り返されるものですから銀行としてもたまったものではありません。おおらかな性格と言ってしまえばそうですが、これは銀行の信用という面から言えば完全にダメな経営者です。

銀行にとって優良な顧客と言うのは、約束事をきちんと守り実行してくれる経営者です。そのような経営者なら次の融資依頼にも前向きに応じられます。

しかし約束事にルーズな経営者に融資を実行すると、あらゆる場面でこの約束を守らない経営者に振り回されて、その対応で銀行が時間を浪費させられることが目に見えています。

銀行としても当然そのようなリスクを避けるため、段々とこの経営者への融資には消極的になっていきます。事業主には銀行との関係において常に「約束事は必ず守る」という誠実な姿勢を持ち続けて欲しいと思います。

銀行の評価を下げる経営者(その2)に続く