銀行の評価を下げる経営者(その2)

銀行の評価を下げる経営者(その1)の続き

公私混同する経営者

事業主の中には事業のお金を公私混同して個人の目的に使ってしまう経営者がいます。この動きは、銀行員が法人の決算書をチェックするとすぐ分かります。

決算書の貸借対照表で資産の勘定科目に「役員貸付金」というのがあります。これは会社から役員(主に社長)に貸し付けているお金を示しています。

筆者の元勤務先も地方銀行だったので、顧客の多くは地元の中小企業であり、融資で出された決算書をチェックしてみると中にこの「役員貸付金」が含まれている場合があり、その取扱いに悩まされたものです。銀行は融資判断においてこの「役員貸付金」の存在をかなり嫌います。

なぜなら通常、役員が個人のために何かを購入したいのなら取締役会で承認された「役員報酬」、つまり役員としての給与からそのお金を出したらいいからです。ところが「役員貸付金」があるということは、取締役会を通さず「会社の金を借りて社長がその地位を利用して(自分だけの判断で)個人の目的に使っている」ということを示しています。この「公私混同」の姿勢を銀行は厳しく判断しています。まさにどんぶり勘定とも言えます。

仮に事業に関して法人と役員の間で一時的に立替払いが発生しこの科目を使ったとしても、銀行は役員貸付金は1年以内に清算されて正常化される短期貸付金と考えているので、もし決算をまたいで何年も決算書に「役員貸付金」が残っていたら、銀行はそれを「既に社長に使い込まれて会社に戻ってこない不良債権」とみなします。

ところがこのような知識さえ欠く経営者がいて、融資申込みに際して、大きな額が計上された「役員貸付金」入りの決算書を平気で銀行に出してきます。そんな決算書を出されたら困るのは銀行です。本部への説明も含めてその取扱いに本当に苦労します。
このような経営者には融資を申し込んでもらいたくないのが銀行員のホンネです。

もちろん今回は解説しやすいので法人のケースで説明しましたが、個人事業主の場合は個人と事業の境界があいまいな分、よりどんぶり勘定になりがちです。事業主には公私混同をできるだけ排除した経営をして欲しいと願っています。

自分本位に融資を繰り上げ返済してくる経営者

銀行の担当者は常に銀行と取引先の間に立って仕事をしています。当然担当者は銀行の行員ですので銀行の利益のために働いていますが、一方では顧客の利益につながるよう一生懸命努力しています。

とりわけ融資においては、銀行と融資先の間に立ち難しい条件交渉に汗をかいています。融資先の希望にもできるだけ沿えるよう努力し、顧客が満足の得られる融資を受けられればそれは銀行担当者の喜びにもなります。

ところがそのような銀行員の苦労もろくに理解せず、やっと実行できた長期融資をいとも簡単に数か月以内で返済してくる経営者がいます。私も行員時代、そのような体験は何度か経験しました。しかもその場合、担当者にほとんど事前連絡なく突然返済してきます。

その経営者は、その難しい融資実現のために汗を流して東奔西走した銀行員の苦労に思いをはせたことがあるのでしょうか?
その事実を知った行員は「何のために急ぐ他の仕事を後に回してでもその顧客のために努力したのか」という気持ちに駆られることもあるでしょう。銀行員にとって融資と言うのはそのような生々しい感情も込めながら身を削り顧客の利益のために行うものです。

しかし単に事業で余分なお金ができた、銀行に支払う金利がもったいない、などの単純かつ自分本位な理由だけで簡単に銀行に融資を返済してくる顧客に対し、銀行は深い信頼感を持てるわけがありません。さらに長期融資を短期で返済されると銀行がそれまで掛けた融資のコストも回収できません。

そのような取引先にまた融資をしても短期で返済される可能性が高いので、次からは銀行も融資をすることにためらうようになります。

自分中心の短期的な利益を優先するのか、あるいは銀行と長期の信頼関係を築きたいのか、それは経営者の考え次第ですが、銀行は自分本位の事業主との融資取引は極力敬遠したいと考えていることだけは事業主はきちんと理解しておいて欲しいと思います。

銀行の支店長・担当者を頻繁に飲みに誘う経営者

人間関係を円滑に保つことはビジネスを行う上でも最も大切なことと筆者も考えています。それは銀行と事業主の関係でも同じことが言えます。

銀行の商品の中で特に融資は取り扱う金額も大きく、その関係が長期に渡る契約では当初の融資交渉も厳しくなるので、飲食を共にして銀行員と取引先がお互いの気心を図っておくことは効果的だと思います。お互いの考えがよく分かりあえていれば融資交渉もスムーズにいくことも多いでしょう。

そのために銀行の支店長・取引先担当者が融資取引先と1~2回、常識の範囲内で飲食の機会を持つことはよくあることです。
一方で、周りを見渡してみると、その身分や地位を利用して不正を働くことに対しさらに厳しい社会からの反発が強まっています。

銀行もお客様のお金を預かって企業活動している以上、不正等で顧客からの信用を失わないよう、そこで働く行員は常に襟を正して仕事をしなければなりません。安易に特定の顧客と密接な関係を築けば、時には不正の温床とみなされ、社会から批判の目にさらされます。

それだけに行員はもとより、融資を受けている取引先も安易に行員を個人的に飲みに誘うなどの行為は極力慎むべきであると元行員は考えています。ましてや融資を好条件で引き出す目的で、行員を飲みに連れ出し個人的に便宜を図る行為は今や銀行内部では禁止行為です。

現在の銀行員はコンプライアンス(法令順守)を通じて銀行から厳しく縛られているので、事業主が安易な考えで行員に近づき便宜を図ろうとすれば、その行員自体が経営者を警戒するようになるということをしっかり理解しておいてください。

あくまで融資は経営者が事業でしっかりした結果を出して、その結果の元に融資を受けるという正攻法が大事だと筆者は考えています。

まとめ

元銀行員の立場から自分自身の経験を踏まえて、銀行の評価を下げてしまう「こんな経営者にはなってもらいたくない」タイプをご紹介してきましたがいかがでしたか。

逆を言えば、このような経営者でなければ銀行と信頼関係を築くことはそれほど難しくありません。

銀行はあくまでオーソドックスな考えで銀行と付き合いのできる経営者を望んでいます。事業をしている経営者は自分が銀行にどのように見られているか、自分を客観的に振り返って観察する見る目も必要と思います。