飲食店の開業時に銀行から借りたお金を返せなくなるとどうなるのか

銀行から借りたお金を返せなくなるとどうなるのか

金融機関から借金すると、通常翌月から返済が始まりますが、返済期間が長いものだと5年~10年にも渡る借入もあります。その期間、返済が順調に進めばいいですが、事業である以上営業不振や個人事業主の場合、突然の病気や不慮の事故に遭遇して返済が滞ってしまう場合もあります。

しかし借金は金融機関から借りている以上、返済を急には止められません。同時に事業も継続する必要があります。そのような場合、事業主はどのような対応を取るべきなのか、考えてみたいと思います。

金融機関に借りたお金を返せなくなるケース

一般的に金融機関から借金した場合、借入先によってタイプが3つあります。銀行等から直接借入した場合、信用保証協会付き融資を借入した場合、そして日本政策金融公庫から借入した場合です。それぞれで返済が遅れた場合の金融機関の対応が異なります。

ただ共通しているのは返済が遅れ始めると、2ケ月目から返済の督促の電話が入り始め、そのまま返済せず放置していると金融機関から3ケ月~6ケ月位のタイミングで内容証明書付き郵便が送られます。中には「あなたの期限の利益は喪失したので融資の残額を全額返済して下さい」という要請文が入っています。

期限の利益の喪失とは何か

ここで言う利益とは借金をした事業主の利益のことを指しています。期限の利益とは、返済という義務をきちんと果たしている限り金融機関は借金の一括返済を求めないということです。事業主は約束した返済期間の間、ゆっくりと事業利益から毎月の返済を分割して支払えばいいわけです。ところが返済が滞り、契約書に書かれた一定の条件が成立すると、事業主は「期限の利益を喪失」し、金融機関に一括返済を求められてしまいます。

金融機関別対応

銀行等から直接借りた融資を返せなくなるケースでは、事業主の交渉相手は銀行そのものです。ただ銀行は滞納状態が一定期間続き債権回収交渉も詰まると、融資債権そのものを民間債権回収会社に低額で売却または回収委託して、事業主との交渉から抜けてしまいます。以後の交渉は債権回収会社と行うことになります。

一方、保証協会付き融資の場合は、元々その融資は信用保証協会が銀行等に支払保証をしている融資なので、事業主が払えなくなると、最終的には保証協会が債務者に代わって金融機関に残金を代払いします。金融機関はそれで債権の回収が完了しますので、以後は事業主の交渉相手は銀行から信用保証協会に代わります。また公的金融機関である日本政策金融公庫の場合は、民間金融機関が利用できる債権回収会社がないので、最後まで交渉相手は日本政策金融公庫となります。

債権回収会社との交渉では、あくまで民間レベルでの交渉なので、事業主としては「返済残金+延滞利息」の合計額を減らす交渉も可能ですが、信用保証協会や日本政策金融公庫を相手とした交渉では基本的にこのような削減交渉は難しいと考えて下さい。なぜならこれらの融資の財源は税金だからです。したがって両機関とも、事業主が法的処理である破産手続きでも取らない限り、返済要請を期限を設けず延々続けてきます。

借金を返すことが難しくなると債務者はどんな対応をとるか

それでは借入をしている事業主が返済するのが難しくなってきた場合、以後どのような対応を金融機関に対して取るか、そのパターンをいくつか挙げてみます。また併せてその後の影響にも触れます。

金策に走り、それでもなんとか金融機関に払おうとする事業者

事業主が事業から利益が上がらなくなって、既に金融機関へ返済ができなくなっている状態だとします。最初のタイプの事業者はそれでも金融機関に何の相談もせず、まじめにコツコツ支払い続けるタイプです。ところが既に事業利益では返済できないし、預金も底をついているので、事業者が手を出すのがいわゆるノンバンクと言われる高金利のビジネスローンです。それを借れるだけ借りると、次はいよいよ闇金と言われる違法貸金業者です。

筆者は元銀行員としてこの事態を何度も経験していますが、こちらで気が付いた時にはすでに事業主は複数の貸金業者から高金利の融資を受けて銀行に支払い続けていました。これらの事業者に共通しているのは、仕事も返済もまじめにするけど、そのような金融業者に手を出すことへの罪悪感もなくその後の悪影響には無頓着ということでした。また判断も一人ですることが多く、頼るべきパートナーもいないことが多かったです。

結果的にはその後、親・兄弟、子供に金銭的・精神的に迷惑をかけることがほとんどでした。当然金融機関からは信頼を失い、全ての新規・追加融資はストップされて、その後の事業の継続が厳しくなりました。

融資が払えなくなる前に早めに金融機関に相談に行く事業者

返済が厳しくなることを事前に察知して延滞が起こる前に金融機関に相談に来る事業主もいます。これは銀行にとっても一番助かるタイプの顧客で、対応がとりやすいケースです。銀行も相手の事業を潰してしまえば融資の回収もできないので、なんとか事業存続を前提に返済を続けさせようとします。

その対策が返済条件緩和 ( リスケジュール ) です。
具体的には事業主と交渉のうえ、
① 返済期間を延ばす
② 一定期間元金の支払を据え置き、利息のみ支払わせる
③ 数千円でも毎月一定額を払わせる
などの方法を取ります。こうすることで事業の回復を待ちます。

融資が払えなくなっても返済を放置もしくは金融機関からの督促を無視する事業者

返済の延滞が始まり、また銀行等から返済の督促がきても無視し放置する事業主がいます。残念ながら、これが金融機関にとっては最悪のケースです。

延滞開始から一定期間(通常6ケ月程度)過ぎても事業主からの反応がないと、金融機関は法的処理に入ります。具体的には返済を求めて裁判を起こしたり、担保となっている土地・建物等の不動産を競売に掛けます。こうなってからではいくら慌てて事業主が金融機関に交渉に行ってももう流れは止められません。当然事業も続けられなくなる可能性が高くなります。

どのタイプの事業者が事業を継続できるか

いうまでもなく、事前に返済が滞ることを察知して金融機関に相談に来た事業主です。金融機関としても何とか最後まで返済をしてもらいたいものです。そのためには金融機関としても支払条件を緩和することは簡単ではないものの、どうにか事業継続を前提に対応しようとします。

逆に事業主が金融に無知でやみくもにノンバンク・闇金で借りまわり、交渉に非協力であったとしたら、残念ながら金融機関もさじを投げざるを得ません。最終的に待っているのは廃業・倒産です。

安易に考えた対応の差がこれだけの結果の差として現れます。悪い結果にならないためにも事業主にはくれぐれも賢明な対応を取ってもらいたいと考えます。