飲食店と過労死~統計とニュースから見る飲食店の過労死

「過労死」という言葉は、社会人として働く人ならば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この「過労死」は、実は飲食店とも深い関わりがあります。

過労死寸前! 飲食店の実態とは

SankeiBizが、「就業構造基本調査」を元にして、「残業が非常に多く、過労死をしてしまいそうな予備軍が多い職業」をまとめています。
これはランキングで表されているのですが、1位は「宗教家」、2位が「医師」、3位が「法務に携わる人たち」となっています。

「飲食店」が顔をのぞかせるのは、4位です。特に「調理を担当している人」がここにランクインしています。しかし、もう1つ問題なのは、6位には「接客や給仕を担当する人」という項目が入っていることです。
飲食店のホール担当者もまた「接客や給仕を担当する人」だと考えれば、飲食店が、非常に過酷な仕事であることがわかるでしょう。

さらに問題なのは、「飲食店の場合は、ほかの職業と比べて収入が高くない」ということです。もちろん個々人にもよりますが、一般的に、医師や弁護士、宗教家は高収入なことが多いと言えるでしょう。そのため、「たしかに残業は多いが、それに見合った(あるいは、見合ってはいないものの相応に)高い年収であること」が働き甲斐の1つとなっていることもあります。

しかし、飲食店の場合は必ずしもそうとは言えません。

飲食店の場合、これらの職業に比べて賃金が安い傾向にあります。つまり、「働いているにも関わらず、平均収入にも届かない年収である」「残業などが多く、休みも少ないのに、それに見合った給料がもらえない」というのが非常に大きな問題になっているのです。

相次ぐ過労死〜実際の事件について

このように、過労死寸前の働き方が求められるなかで、実際に過労死をする人も何人も見られました。

一つ一つの辞令や残業について述べるのは難しいのですが、残業が200時間を超えていたり、80時間もの残業をこなしているのにも関わらずそれが初任給として組み入れられたりしていた(この事例の場合、初任給は19万円)、という事例があります。

また、単純に「残業時間が多い」ということだけが、過労死の原因となるのではありません。
たとえばの話ですが、「仕事が繁忙期のときはどうしても休めない。1か月で100時間くらい働いていた。でも、社員間の関係は良好だし、残業代も法律に定められている分がきちんと出る。15分刻みで出るから、やりがいもある。どうしても体調を崩した人は、本人が『出られる』と言っていても、強制的に休みをとらせて病院に行かせていた」というホワイト企業もあります。

しかし、過労死にまで追いつめられる会社や店舗の場合は、このような対応が望めない場合がほとんどです。
長い、しかも無給の(あるいは不当に低賃金の)残業を強いられているだけでなく、パワーハラスメント(以下「パワハラ」)がセットになって襲ってくることが多いのです。

たとえば、やっと休めると思っている休日に、突如として緊急性のない電話がかかってきて店舗に呼び出される。
売り上げがあがっていないということで、「死ね」などの言葉を掛けられる。

このようなことが日常的に行われていたのです。

「過労」が奪う人間の思考力

「過労死」というと、多くの人は「そんなことになる前に、仕事を辞めればよい」というのではないでしょうか。
しかし、実際にはなかなかそうはいきません。
なぜなら、このように「極限まで働かされており、かつパワハラを受けている」という状態では、人はまともに判断をすることができなくなります。

私たちは「過労死」と聞くと、「働き過ぎが問題で、体が異常をきたして動脈硬化などで亡くなること」をイメージするかもしれません。しかし、過労死には「自殺」も含まれています。当たり前の休日と正常な判断力を奪われた結果として、「仕事を辞める」という選択肢ではなく、「命を絶つ」という手段を選んでしまうのです。

恐ろしいのは、このような過労死問題が起こったとき、経営者側があまりにもそれに対して無関心であることです。
「役員も把握していたが、とめることはなかった」「役員はまったく把握していなかった」などのケースも多くみられているのです。店舗の暴走を止められない役員は役員としての態をなしていませんし、把握ができていないのであればそれはそれで大きな問題です。

多くの飲食店は、おいしいご飯を出し、従業員とお客様を幸せにし、会社が利益を上げていくことを考えています。
しかし一部の飲食店にとっては、従業員がただのコマのように見えているのかもしれません。
このような飲食店の姿勢は問題とされており、弁護士のなかにも、積極的にこれの解消に動いている人たちがいます。

飲食店の経営者の立場としては、「過労死が起きない職場」を作り上げることが求められています。
飲食店で働く側は自分の判断力が残っている間に周りに相談するのが最善の解決策だと言えます。しかしそれが難しいようならば、周囲の人間(特に家族)が手を差し伸べ、強引にでも救い上げなければなりません。