銀行が金利を引き上げてきたとき、飲食店主としてはどうする?

銀行と融資取引していると、金利の引き上げを言ってくることがあります。もし事業主が融資を受けて以降、そのような金利の引き上げ要求を受けたことが初めてとしたらどう対応するべきか迷ってしまいますよね。

金利の引き上げ要求に対してはいくつかの対処方法があります。そして引き上げを言ってきた銀行の理由についても様々です。どのような理由に基づき銀行は金利の引き上げを言ってきているのか、またそれを踏まえて事業主はどのような対応をしたらいいのか、地方銀行に長年勤務してきた著者が自らの体験を踏まえて解説します。

どのような時が融資金利引き上げのタイミングとなるか?

銀行が金利の引き上げを言ってくるタイミングというのはそんなに頻繁ではありません。なぜなら頻繁に金利の引き上げを要求すると顧客もストレスを感じ防御態勢を取るようになるからです。防御体制とは

⒜社長が銀行員の訪問を避けていつも居留守を使って会ってくれない
⒝それまで銀行の総合取引(売上金入金や役員などの預金取引、キャンペーン商品の購入等)には協力的だったのが全く非協力的になった
⒞いきなり他の銀行に融資取引全体を借り換えされた

などです。

さすがに融資の借り換えなどされてしまえば金利収入が全く入らなくなりますので、これでは最初から金利引き上げを言わなかった方がましです。そのため銀行としても融資先に金利引き上げを言う時には取引先に納得してもらうための理由も必要で、それにはいくつかのパターンがあります。

①融資先の事業の業況が悪く決算で赤字が続いて財務内容が悪化した時
②融資の返済が厳しくなり事業主が支払い条件の変更(返済期間の延長、毎月返済額の削減等)を銀行に申し出た時
③事業主が増額融資を申し込み必要な担保や保証人が用意できない際、銀行が以前の金利より高めの金利で増加融資に応じるよう求めてきた時
④市場金利が全般的に上昇基調で誰の目にもそれが分かるようになった時
⑤その銀行の方針で全支店一斉に金利引き上げキャンペーンを開始した時

などです。

銀行内ではどのように金利の引き上げが検討されるか?

ここで一つの例として銀行で一斉に金利引き上げキャンペーンが実施された時の各支店での動きを説明します。

金利引き上げはその銀行の基本方針なので個別の支店で中止することはできませんが、運用は各支店に任されています。キャンペーン開始と同時に本店から各支店に向けて融資先の一覧表が送られると同時に基準となる金利の引き上げ幅が示されます。しかしこの引き上げ幅はあくまで目安にすぎず、支店での実際の顧客との交渉で理想通りの金利引き上げが行われることは滅多にありません。事業主も金利を引き上げられるとそのまま会社のコスト上昇要因になりますから容易には納得しません。

ですが金利引き上げ交渉のツボはまさにここにあります。

つまり銀行の得意先係または融資担当者が「○○の理由により御社は今回○%金利を引き上げたい」と依頼してきてもそのまま相手の言う通りの金利を受け入れる必要はないのです。はっきり言えば銀行員が示してきている金利の引き上げ幅は銀行の期待に過ぎないからです。特に明確な根拠があってその金利を示しているのではありません。まずは金利引き上げを要求された事業主はこのポイントをしっかり押さえて欲しいと思います。銀行は上限の金利幅を示して事業主の反応を見ているのです。その反応によって銀行員は色々な対応をします。

例えば

①事業主が簡単に受け入れた場合
事業主が銀行の要求を安易に受け入れると銀行員はこの事業主は組し易いと判断して嵩にかかってきます。当初金利引き上げを提示されたのが長期融資金利だとすると、ついでにと短期の融資金利まで引き上げられます。

②事業主が受け入れに躊躇(ちゅうちょ)した態度を示した場合
事業主が引き上げ幅に渋ると徐々に距離を詰めながら落としどころを探ってきます。一回の面談で片が付かない場合は、間をおいてまた訪問してきます。なぜなら銀行員はこの事業主は渋っているけど引き上げ受入に脈ありと表情や態度を見て判断したからです。数度の交渉を経て結論は提示された上限幅とゼロの間で両者合意に至ります。これが最も多い金利引き上げの結果です。
その後銀行内部では何が行われているかというと、担当者が上司に結果を報告して終わりです。上司も顧客をこれ以上刺激したくないのでこれで終了です。要は金利が幾ばくかでも上がれば支店としてそれでOKなのです。いい加減と言えばそうですがそれが実態だと理解して下さい。

③事業主が受け入れがたいという姿勢を強く示した時
銀行の金利の引き上げ要請に対し最初から事業主が強い拒否感を示すか、要請に対し他の銀行へ融資を借り換えする姿勢を示したケースです。

この場合は殆どのケース、次から銀行員はその顧客には金利引き上げの話をしません。で、何をやっているかというと金利引き上げを受け入れてくれそうな相手を探してそちらへの交渉を加速させています。強い拒否反応を示した相手にはそれ以上突っ込まず、比較的交渉で落とせそうな相手を狙って金利の引き上げを繰り返し要請しています。そして金利引き上げキャンペーン期間が終了すると、金利が引き上げられた先と全く引き上げられなかった先が混在したまま通常業務に戻ります。良心的に金利引き上げに応じた事業主から見れば不公平な話ですがこれが銀行の実態です。

金利の引き上げ要請に対する事業主の対応

銀行の内部的な話を理解してもらえれば、銀行員が金利引き上げの話をしてきても簡単に応じるべきでないということがお分かりいただけたと思います。簡単に応じればその交渉記録が銀行内部で蓄積され、その資料がさらに次回金利引き上げキャンペーン時に次の担当者に引き継がれるので真っ先に金利引き上げの良いカモにされてしまいます。

最初から金利に関心がないのでは論外と思いますが、事業主にはできれば最低限自分の現在の銀行融資の金利のパーセンテージ、年間にどれぐらいの額を銀行に支払っているか位はしっかり把握しておいてほしいと思います。

さらに数字に強い経営者なら自分の預金取引も含めた総合取引が銀行へどれ位貢献しているかまでちゃんと把握しています。

銀行員がその会社に金利の引き上げを言ってきても、数字に強い経営者ならその取引数字を出して銀行員に「当社としては御行に各種取引でこれだけの貢献をしているが、どのような根拠に基づいて当社にこの金利引き上げ幅を求めているのか数字で根拠を示して下さい」と求めます。

殆どの場合、これだけで銀行員は金利引き上げの話を止めてしまいます。なぜなら最初から明確な根拠などないので示せるわけありません。

このように銀行の金利引き上げに対して経営者は簡単には応じないという姿勢を持つことがまず第一だと筆者は考えます。その上でじっくりと銀行との交渉に臨みたいものです。

ただし個社別にみると、会社の経営状態が悪く、しかも返済にも困難が生じてリスケジュール(返済条件の変更等)を銀行に認めてもらわなければならない場合は、交換条件に銀行の要求する金利の引き上げにも応じなれければならないケースもあります。なぜなら銀行としてもその会社を見捨てて簡単には潰せないので何とか追加融資やリスケジュールに応じようとします。

しかしこのような業況の悪化した会社に対する追加融資やリスケジュールは全て本部決済案件です。本部としても融資やリスケを認可する代わりに金利引き上げを条件とすることが多いのです。もし企業の存続を事業主が一番に考えるならば金利引き上げは受け入れざるを得ないと思います。

まとめ

いくつかの金利引き上げのケースを取り上げ事業主の対応の仕方を示してきました。

金利引き上げは事業主にとってうっとうしい話には間違いありませんし、できれば避けたいものです。しかし銀行も民間会社である以上、金利を引き上げなければならない時もあります。一切金利引き上げに応じないという事業主の姿勢もまた現実的ではありません。それに固執しすぎると銀行から必要な時に追加融資を受けられないというデメリットも発生するかもしれません。あくまで金利交渉は銀行との相対交渉ということを踏まえて事業主には現実的な対応をしてほしいと著者は考えます。