恐れないで! 飲食店では外国人観光客との間の「言葉の壁」は本当は気にしなくて良い

私たちは、義務教育、そして多くの人が進む高校で英語を習います。また、それ以外の言語を学ぶ人もいるでしょう。

しかし、よく言われることですが、日本は単一民族の国です。日本で暮らしている人の多くは英語やほかの言語を必要としません。
「学生時代は英語も勉強していたけれど、卒業してからは使うことがなくなった」という人が大半なのではないでしょうか。

しかし現在はグローバル社会。
海外からも多くのお客様がいらっしゃるようになった今、「海外からきてくれるお客様との応対」には無関心ではいられません。

もっとも多くの人が「食事」に期待して日本を訪れている

金沢大学が、飲食店と、そこに訪れる海外観光客の意識について調べた研究結果があります。
そのなかで、「日本政府観光局の、訪日外客訪問地調査2010」のデータを紹介しています。

それによると、外国からの観光客が一番期待していたのは「食事」だったとのこと。
これは、「爆買い」などで話題になった「ショッピング」を10パーセント近く突き放し、1位にランクインしています。全体の6割を超える人が、「日本の食事に期待していた」と応えているのです。

日本は現在、世界に名だたる食の都です。
「高い」などの問題点を指摘する人もいますが、言い方を変えれば、お金さえ払えば、世界各国のあらゆる料理が食べられると言っても過言ではありません。
日本食はもちろんのこと、フレンチ、イタリア料理、フィリピン料理、モロッコ料理、ロシア料理・・・・・・現地に行くことが難しい国の料理が日本には溢れています。
そのような食の都に、多くの人が憧れと期待を抱くのは無理からぬことでしょう。

それでも、「外国人の呼び込みが難しい」と考える人は多い

ただ、ここに残念なデータがあります。
あくまで金沢の統計ですが、「外国人に食べに来てもらうために、積極的に活動をしている」と答えた飲食店は、なんと15.2パーセントにすぎないとなっているのです。残りの84.8パーセントは、少なくとも積極的には、外国人を招き入れようとしていません。

そこにはさまざまな理由があります。
しかしそのなかで、もっとも多くを締めるのは、「言葉の不安」です。

「外国語(この場合、多くは英語や中国語でしょう)がうまく使えないから、外国人を呼び込むことができない」と答えた飲食店の割合は、57.6パーセントにのぼっています。

「お客様からオーダーをされても、自分は英語が使えない」
「何を言われているかわからない。違う注文を運んでしまったらどうしよう」
「『いらっしゃいませ』や『ありがとうございました』は通じるのだろうか」
と考えて、躊躇してしまう人が多いのだと考えられます。

意外や意外?! 観光客の方は気にしていない

ただ、このような「言葉の壁」は、実は大した問題ではありません。
なぜなら、その反証となるような統計も出ているからです。

外国人観光客に聞いたところ、「言葉の問題で、お店側に悪い印象(「少し不満を持った」「不満だった」)を持った」という人は、わずか15.8パーセントにすぎません。
「普通だった」と答えた層はもっとも多く34.5パーセント、逆に「良い印象を持った(「満足した」「やや満足した」の合計値)」と答えた人も48.9と、半数近くに上っているのです。

このように考えれば、店側が感じる「言葉の不安」は、利用客にとっては重要視することでもなければ、その店に対して悪い印象をいだく理由にもなり得ない、ということがわかります。

また、「外国語表記は重要だ」と考えている飲食店は50パーセントを越えていますが、これも観光客側からすると、それほど重要ではないということがわかります。

私たちは、「英語ができないこと」を過度に恐れてしまいがちです。しかし、観光客は「言葉が通じないこと」を前提としてお店に訪れています。飲食店側が身構えしすぎる必要はないのです。

ただ、メニューは口頭で伝えるだけでなく、紙に書いておいた方がわかりやすいでしょう。また、写真をつけておくと、どんなものかがぐっとわかりやすくなります。指さしで注文することができるので、外国からの観光客にとってはありがたいでしょう。
顔をあわせて意思の疎通をはかるわけですから、それでも十分伝わります。また、何かを伝えたいときは、無理に文章にするのではなく、単語でも話しても相手に伝えることができます。大切なのは、「外国語を完璧に話すこと」ではなく、「相手の言いたいことを理解すること」なのですから、文法などは気にしなくてよいのです。

私は仕事でよく海外に赴きますが、決してきれいな英語は使えません。メニューブックのなかから知っている単語を拾ってそれで注文しています。英語で注文できればもちろんそうしますが、その場合でも、指でメニューブックを指し示して注文するようにしています。
「どんなものが出てくるか」をドキドキしながら待つのも楽しいものです。
多くの外国からの観光客も、このように考えているのではないでしょうか。