融資を繰り上げ返済したいと思った時、飲食店主はどう対応すべきか? 

当初銀行から融資を借りてスタートした事業が軌道に乗って売り上げも利益も順調に増えている状態だとします。連続して利益が出てかなり自己資金も貯まってきたので事業主がその資金の一部を使って銀行の融資を返済しようかなと考えています。

返済期限より早く返済して融資金額を減らすのがいいのか、早く返済した場合銀行はどんな対応をしてくるのか、また返済せずこのまま銀行と融資取引を続けるのがいいのか、事業主としては色々な考えが頭を巡るでしょう。この融資の繰り上げ返済について事業主はどう対応したらいいのか、元銀行員の著者が体験を踏まえて解説します。

繰り上げ返済とは?

融資の返済期限を待たずに融資の全額または一部を返済することを繰り上げ返済と呼びます。銀行では融資の全額返済を一括返済と呼び、一部を返済することを内入れ(うちいれ)とも言います。

両者には取り扱いで大きな差はなく、内入れの場合、引き続きその銀行と融資の契約が続くことになります。ただし内入れにより融資残高が減るので銀行から以降の返済方法についてどうするか相談を受けることになります。(これについては以下の章で詳しく述べます)

また一括返済の場合は、融資残高そのものがゼロになってその銀行と融資取引が終了する場合と、融資件数が数本ありそのうちいくつかを一括返済で減らして、残りの融資でその銀行と引き続き取引が継続されるケースがあります。

繰り上げ返済の目的

事業主にとって繰り上げ返済の目的とは何でしょうか?

一番の目的は繰り上げ返済を行うことで融資額を減らし返済の負担を減らすことにあります。毎月の返済額を直接減らす効果もありますが、融資額が減ることで事業主の精神面の負担も同時に減ることになります。融資は事業主にとっては借金ですから繰り上げ返済によるその効果は大きいですね。

繰り上げ返済の方法

繰り上げ返済の返済原資について考えてみます。

原資は大きく二つに分かれます。自己資金と他行融資による借り換え資金です。自己資金の場合の源泉は事業の利益から生じた現金・預金です。事業の運転資金として使う自己資金は月商の3ケ月分もあれば十分なのでそれを超える自己資金が貯まれば融資金への返済を考えてもいいかもしれません。

一方特殊なケースとしては他行から融資を借りて、その資金で取引銀行の融資を全額繰り上げ返済する場合です。

事業主がこのような判断をする時は、取引行が追加融資に消極的になり経営者が不満を持ち始めた、あるいは銀行の融資金利が高止まりして事業主が引き下げ要求しても銀行が応じてくれない等が原因です。このような場合、繰り上げ返済しても他行で新たに融資残高が発生するので融資残高は減りませんが、取引行を変更することで融資姿勢が改善される、金利が下がって返済額が減るなどの効果も期待できるので事業主は双方の銀行の態度を見て総合的に判断する必要があります。

繰り上げ返済のメリット・デメリット

一般の個人ローンの場合だと繰り上げ返済のメリットは大きいと思います。

例えば住宅ローンですが、個人の住宅ローンの返済原資は毎月の給与です。給与は支給額が決まっているので、もし元金の一部でも返済ができればその分毎月の返済額を減らしたり、あるいは返済額をそのままにして返済期間を短縮できますので、その結果、利息を含む総支払額も減りますから大きなメリットになります。
一方事業を営む経営者の場合は、個人のように簡単に繰り上げ返済をメリットの面からだけで良いとは判断できません。

理由のひとつは事業主の場合、一番優先しなければならないことは事業を安定的に経営することです。そのためには毎日の資金繰りをきちんと行うこと、資金繰り安定のために取引銀行からいつでも必要な融資を受けられるようその銀行と良好な関係を築いておくことです。しかし事業主の都合による融資の繰り上げ返済は銀行にはその後の予定していた金利が入らなくなることを意味するので、以降銀行が融資に消極的になる引き金を引いてしまうかもしれません。それだけに必ずしも個人のように簡単に繰り上げ返済が良いとも言えないのです。

さらに融資というのは事業主の側から見れば、「融資を返すのは余裕資金があれば簡単」だが「追加融資を頼んだ場合審査に時間が掛かり、しかも必ず融資が受けられるとは限らない」という二面性を持っています。
もし事業の利益でかなり自己資金が貯まっていても簡単に繰り上げ返済を急ぐべきでないという理由もここにあります。

事業というのは好調な時もあれば不調な時もあります。売上が低迷し利益が出なくなった時、どう資金繰りを安定させながら事業の回復を図るかという課題が事業主には常にあります。

自己資金さえしっかり確保しておけば例え売上が落ちても慌てて銀行に融資を頼みに走る必要もありません。一方、いったん自己資金の一部を返済に回してしまえばその分自由に使える資金が減ることになります。事業の自由度が確実に落ちますので事業主には繰り上げ返済を考える時には、自己資金とのバランスを十分検討してから判断してもらいたいと思います。

違約金の発生

繰り上げ返済に関して付いてくるデメリットに違約金があります。
事例を挙げて説明します。

A銀行は取引先B社のために固定金利2.0%で返済期間5年の融資を用意しました。一方A銀行はその固定金利融資のため同時に金融市場から固定金利0.5%の預金を調達してきました。

ところが取引先B社は途中でお金ができたという理由で返済期日前に全額返済すると申し出をしてきました。
銀行としては大変困ります。途中で返済されてしまえば金利が入らなくなるばかりか、それまでの預金調達や融資の審査や管理に掛かったコストが回収できません。

そこで銀行としてはB社が簡単に繰り上げ返済できないように違約金を契約時に入れて取引のバランスを取っているのです。

繰り上げ返済を検討している事業主は、融資を契約する前にこの違約金があるかどうか銀行に聞いてよくチェックしておく必要があります。

繰り上げ返済のメリットの活かし方

そうはいっても繰り上げ返済で大きなメリットがあることも事実です。事業主としても銀行の反応を観察しつつ、繰り上げ返済することで資金繰りに大きな影響が出ないのなら、そのメリットを十分活かす方法を考えてみて下さい。繰り上げ返済後のメリットの活かし方としては大きく二つの方法があります。

①返済期間変更なし・毎月返済額の減少

繰り上げ返済で融資元金が減りますので返済期間についてはそのままにして、毎月返済額を減らすことができます。ただしこれは銀行にとって融資の返済条件の変更になりますので事前の相談が必要です。またこれは銀行にとって返済条件の悪化ではないので銀行には比較的容易に受け入れてもらえます。

②毎月返済金額変更なし・返済期間短縮

一方、毎月返済額を繰り上げ返済前の返済額と同じ金額にしたまま返済期間のみを最初の返済期間より短くする方法もあります。返済期間を短くすることで以後の金利を含む総支払額も減らせるでしょう。こちらも銀行としては返済条件の悪化でないので受け入れてくれます。

まとめ

余裕資金ができた場合、事業主は繰り上げ返済すべきかどうかという点から解説をしてきましたがいかがでしたか。

著者としては、事業主には安定した事業の継続をまず一番に考えてもらいたいという点から、また取引銀行との安定した関係を継続するという点からも銀行融資の繰り上げ返済には慎重であって欲しいと考えています。
もちろんこれが他行から融資を借りて取引行に融資の繰り上げ返済する場合は、間違いなく取引行との関係を悪化させるのでさらに慎重な判断が必要なことは言うまでもありません。

繰り上げ返済の判断に当たっては色々な条件を十分比較検討し、それでも問題なくメリットが大きいと事業主が判断した場合、初めて実行に移すべきだと著者は考えています。