飲食店の創業計画書を作るとき、どんな事を書いたらまずいのか

創業計画書の必要性

飲食店の開業資金を銀行・信用保証協会や日本政策金融公庫に申込した場合、各審査機関から事業に関して創業計画書を出すよう求められます。

新しく飲食店を始める者にとって創業計画書を作るのは初めての経験だろうと思います。しかしお金を借りる以上悩みながらでも作成しなければなりません。そこで、その計画書の書き方について、特に「資金調達と事業の見通し」という重要な点に注目し、どのように書いた場合、審査の面でまずい書き方になってしまうのか、元銀行員の視点から解説します。

なお、事業計画書の書き方の例として日本政策金融公庫(以下日本公庫)の創業計画書記入例を添付しましたので、これに沿って説明します。

創業計画書 記入例

「必要な資金と調達方法」におけるまずい書き方

日本公庫の創業計画書の項目7に「必要な資金と調達方法」があります。開業に必要な資金とその資金をどのようにして調達するかを説明した一覧表です。

開業に必要な資金は店舗の取得費や工事費用、設備費、運転資金などの項目に分類されますが、これらの項目は必ず売主や業者からの見積りに合致していなければなりません。計画書に見積りが添付されていたらよいのですが、根拠となるこの見積りがない計画書がたまに出されます。これは銀行なら多少大目に見てくれるかもしれませんが、日本公庫など公的機関のような審査機関ではアウトです。粗雑で手抜きをする人としてみなされます。

調達の項目に目をやると、一番のポイントは自己資金です。自己資金がどれぐらい用意できているかが審査の結果に影響します。多ければ多いほどいいですが、最低でも必要額の25%~30%は欲しいところです。さらに資料に普通預金の残高コピーがついていればさらにいいですが、添付されていないのが多いですね。特にその自己資金がどのようにして作られたか、一時的見せ金でなくコツコツと積み立てられてきたかどうか、自己資金が作られた過程を職員はチェックしています。

親兄弟・知人からの借入金もチェック項目です。開業後うまく売上げが伸びず、忍耐の期間を迫られた間も毎月の運転資金は欠かせません。融資は簡単に借れないので、親族知人からのこの自由に使えるお金の存在は重要です。ただこの項目が金額的に多すぎるのもよくありません。本当に借れるのか不確定要素が多いし、何より日本公庫としては確認できません。もしそれでも書く必要があるなら、親族からの借入金として正式な借用書を添付するとか、贈与金として通帳のコピーをつけるなど配慮をしてください。

借入予定の日本公庫と他の金融機関の融資があればできるだけ返済条件(元金、金利、返済期間、元金の据置期間があればその期間、元利金均等返済か元金均等返済かの別)を詳しく書くようにしてください。この部分を正確に書けているかどうかで、申込者の日本公庫以外の金融機関との交渉力やダメ詰めの程度を見られますので手を抜いてはいけません。

さらに計画書・左側の設備資金・運転資金を右側のどの資金から調達したかのバランスも重要です。店舗取得費・設備資金はできるだけ返済期間が長い(10年以上)借入金から調達したいです。厨房機器や什器類も中古品やリースで手に入れば、手持ち資金を使う必要がなくなります。

一方運転資金もできるだけ自己資金か長期借入金(返済期間5年~7年)から調達したいです。いずれも長期借入金がポイントなのは、返済延滞を発生させない限り、元金を毎月一定額、時間かけてゆっくり利益から返済すればいいからです。

計画書作りで、本人が設備資金と運転資金をどれから調達するかも理解できていないようなものは完全にまずいです。担当者から資金使途と調達先を質問されてもちゃんと答えられる準備をしておいてください。

「事業の見通し(月平均)」におけるまずい書き方

創業計画書の項目8「事業の見通し」はさらに重要です。ここで、創業当初と事業が軌道に乗った時点の借入の返済の見通しをしっかり金融機関に数字で示す必要があるからです。

日本公庫の例では創業当初と事業が軌道に乗って売上が約30%伸びた姿が描かれていますが、できれば逆に売上が落ちたケース(例えば20%減)も想定してこの見通しを作っておきたいです。そうすることで、もし売上が落ちて運転資金がさらに必要になったときどう対応するか、その時の対策にもなります。マイナス予想は金融機関の融資判断では決して不利益になりません。むしろ「よく考えている」という逆のプラス評価になります。別に資料として出さなくていいので、交渉の材料として使ってはどうでしょうか。

売上高については、同業他社の業界データをきちんと調べたうえで、過大でない売上高を書く必要があります。創業者は夢を大きく描きがちですが、ここは冷静になって現実的な数字を書きましょう。もちろん軌道に乗った後の数字もやや控えめにすべきです。

仕入れ原価は事例では原価率35%となっていますが、日本公庫も根拠をもってこの数字を使っていますので仕入れ原価を出す場合、この数字を使って計算しましょう。意図的に原価率の数字を下げて利益を大きくすると、計画が甘いと判断されてしまいます。

経費に関しても人件費、家賃等、はっきり根拠を示せるものはできるだけ資料を添付しておきたいものです。計画書作りはどれくらい細部まで手を抜かずに作りこめるか、審査機関の評価はそこにかかっていると言って間違いありません。
このようにして最終的に借入金の元金返済に必要な利益が出されてきます。

「事業の見通し」では要するに何が大事か

計算の結果、利益が見込めるようになったとします。
ところがまだこれでは不十分です。その利益で最低、毎月借入金の元金返済と事業主の生活費がカバーできるものでないと十分とはいえません。それがカバーできないということは計画自体がずさんか、借入金が大きすぎるのです。計画そのものを見直さねばなりません。

たしかに創業当初は不確定要素が多いので数字もアバウトなものになりますが、だからこそできるだけ綿密な事業計画書作りが求められます。売上げが当初予想より少ないと、利益が落ちて運転資金がさらに必要になります。逆に売上げが伸びてもさらに増加運転資金が必要になります。問題はその場合、それに見合った自己資金が十分確保できているかということです。金融機関からの融資は簡単には手に入らないという前提で計画書を作ってみてください。

このようにいくつかの可能性を頭に描きながら創業計画書を作っていく必要があります。ずさんな計画書がいかに事業の致命傷に結びついていくか、お分かりいただいたのではないでしょうか。