「これを持ち帰らせて」に、飲食店はどう対応する?~パッケージングの問題

飲食店を経営していれば、
「お腹がいっぱいになって食べきれない」
「食べている最中だけれど、どうしても外せない仕事が入ってしまった。今から行かなければいけない」
「おいしかったから、家族にも食べさせたい」
といった理由から、「この料理を持ち帰らせてほしい」と言われることがあるでしょう。

しかし、このときに脳裏をよぎるのは「食中毒」の文字です。もし持ち帰ったものに菌などが増殖し、その結果として食中毒が起こったとなれば、お店は大きなダメージを受けます。
しかし、目の前のお客様の要望を無碍に断ることもできない……。
このような場合はどうすればよいのでしょうか。

法的な規制と厚生労働省の見解

まず初めにはっきりしておきたいのは、「法的な規制」の部分です。
食品に関する法律としては「食品衛生法」が一つの基準になりますが、食品衛生法には、「持ち帰り事態を禁ずる文」はありません。そのため、一定の基準をもって、「これは持ち帰ってはいけないものだ」などのようなことを言うことはできないのです。

この、「法律的な縛りがない」というのは、実は少し厄介なものです。
基本的には、多くのお客様は、「お持ち帰りができないのです」と言えばそのまま納得してくれます。
ただ、一部のお客様は、「お金を払っているのに、どうしてだめなんだ」「まだ一口しか食べていないのに全額を支払えというのか」「気に入った料理だから持ち帰りたいだけなのに」とクレームを言ってきます。「法律でそう決まっているから」ということであればお客様のことも説得しやすいのですが、そうでないため、このような反論に真っ向から向かい合うことは難しくなってしまいます。

実際の例について

このような問題もあるため、飲食店のなかには、「お客様ご自身の責任において、お持ち帰りください」としているところもあります。また、その続きとして、「もし万が一食中毒が起きた場合でも、当店では責任を負いかねます」としているところもあります。
実際の例では、「こちら側では、梱包は一切しない。アルミホイルやサランラップ、そして未使用の箸を渡し、お客様ご自身の手で梱包してもらっている」としているところまでありました。

このように万全の姿勢をとり、かつお客様に納得してもらっているのであれば、万が一食中毒が起きたとしても、それはすべてお客様の責任に帰するように思われます。「お店側としてはできるだけのことをした、こちら側には非がない」とも言いたくなるでしょう。

しかし、残念ながら、現実にはかなり厳しい判断が下されます。

現在、専門家の見立てでは、「たとえお客様が納得し、お客様が自己責任であることを引き受けたうえでお持ち帰りになった場合であったとしても、店側に一切の落ち度がなかったとまでは言えない」ということです。

つまり、お客様に梱包材を渡し、説明をして、従業員は原則として手を貸さなかったのだとしても、お店側にも一部の責任が生じることがあるのです。飲食物を提供している以上、「お客様が勝手にやった」「お客様の自己責任でつめてもらった」という言い訳が使えなくなるということをきちんと覚えておいてください。

では、なぜ店側にも責任が出てくるのでしょうか。
これは、食品衛生法第6条によります。
食品衛生法第6条というのは、簡単に言えば、「次の項目に当てはまるものは、作ったり、売ったり、提供したりしてはいけないよ」と定めたものです。
その項目としては、
・腐っていたり、未熟だったりするもの(納豆などは含みません)
・有害物質が入っている可能性があるもの
・病原微生物に汚染されている、もしくはされていると考えられるもの
・汚い物や異物、それ以外の物が入っていて、食べた人の健康を損ねるもの
があげられています。

「持ち帰り」は、この食品衛生法第6条のなかの4つめ、「それ以外のもの」にひっかかる恐れがあります。

それでも持ち帰りたい、と言われたら

このように考えていけば、飲食店側としては、「持ち帰り」を禁じる方がよいということになります。万が一食中毒が起きたとしたら、それはいい気な問題となるからです。

ただ、それでもどうしても「持ち帰りたい!」と言われたのなら、
・お客様の責任でのお持ち帰りとなります
・適切な温度管理の設定をお願いする
・長くおかず、すぐに食べてもらうように頼む
・温かいところではなく、涼しいところに置くべき
・加熱して食べて
ということを告げましょう。たしかに、「お客様の責任だ」としていてもお店側もリスクを負わなければなりません。しかしこの言葉を付けると、「まぁ自己責任だと言われていたから」と、問題を大きくしない人も出てくるでしょう。また、適切な保管方法を伝えることもとても大切です。

食中毒は、飲食店の根幹を大きくゆらがすものです。
そのため、そのリスクを下げるためには、飲食店側も「持ち帰り」に慎重にしなければなりません。