飲食店と労災~実体験に基づく「認められるもの」

労働者の権利である「労災」。しかしこれは一般的な「保険」とは違い、どこからどこまでが認められるのか」という問題はあります。今回はそれについて見ていきましょう。

労災の基本とは

「労災は、どこからどこまでが認められるのか」ということを知るためには、まずは、「そもそも労災とは何か」という原則について知らなければなりません。

労災とは「労働災害(の補償)」を指す言葉であり、労働に関わっているときに起きたけがや病気に対して支払われる補償です。労災と認められれば医療費の全額控除が受けられますし、後遺症が残った場合、あるいは不幸にして当事者が亡くなった場合には、それ相応の補償があります。この「労災」というのは、労働者の権利であるのと同時に、労働者という大黒柱を失った家族に対する補償でもあると言えるでしょう。

労災が認められる条件とは

では、労災が認められる基本の条件とは何なのでしょうか。

まず、仕事中に起こった災害であること。
たとえば、仕事の棚卸中に腰を痛めてしまったり、レストランのキッチン担当をしている人が火傷をしてしまったりしてしまった場合を想定するとわかりやすいでしょう。ただし、「勤務中ではあるけれども、勤務とは関係のないところで起きたと考えられる事象」については、労災とは認定されません。

現在は、残業問題などもありますね。このようなケースで精神を病んだり自殺をしたりしたような場合も、職務との因果関係が認められるのであれば、これは「労災」と位置付けられることになります。目には見えない心の病や、あるいはもっとも悲惨で悲しい「自殺」ということにたいしても、労災の制度は手を差し伸べるのです。

また、労災は実は「通勤の際に負ったけが」などについても補償します。
たとえば、自宅から会社に行く最中に負ったけがなどです。このような場合も「労災」として認定されて、その補償を受けることができます。ただし、「帰り路に学生時代の友人と飲んで、ふらふらしながら帰った」などのようなケースでは「通勤路での事故」としては考えられないため、原則としては労災の認定が受けられないことになります。

労災は、非常に大きなお金が動くものです。そのため、その認定はかなり厳しいものになると言えるでしょう。後述しますが、それで実際に裁判に至るケースもあります。ただ逆に、会社側が温情処置を講じるケースもありますから、これは、当事者(あるいは、不幸なことではあるけれども遺族側)の訴えの正当性、企業側の姿勢によって変わってくると考えるべきでしょう。

どこからどこまでが認められる? ケース1

さて、ここからは実際の例について見ていきます。

「労災かどうか」ということを考えるときの例として挙げたいのが、「手荒れ」です。たとえば、水仕事などを主な業務としていたときに、それでひどい手荒れになったとします。このようなケースでは、当然にして、労災である認められるように思われます。

しかし実際の例では、「これについては労災と認定しない」という決断が出されたことがあります。その理由いうのは、「もともと肌が弱かったのかもしれないし、手荒れと職務が『原因と結果』としてまったくのイコールになるか、と言われるとそうとも言いきれない」というのがその理由でした。

もちろんこれは会社ごとによって多少の違いはありますが、このような実例がある以上、「因果関係がはっきりとは認められない場合は、相応の理由があるように見えても、それを断られる可能性はある」と考えるべきでしょう。

どこからどこまでが認められる? ケース2

ただ一方で、会社側の温情措置とも言える認定があったケースもあります。

「仕事中でもなければ、厳密に言えば通勤の最中でもないときに亡くなったり後遺症が残ったりするような災害に見舞われたが、それでも『労災であった』と会社側が認定し、遺族にその補償をした」という企業もあるのです。

このような「温情措置」は、実はさまざまな業界・会社が行っています。特に、故人が残してきた子どもが小さかったり、配偶者が現在まだ働ける状態になかったりするような場合は、会社も、人道的な立場から、自ら労災認定に踏み切ることもあります。もちろんいくらお金が出ても亡くなった方は帰ってきませんし、後遺症が治るわけでもありません。しかし、「お金が出る」ということは、家族にとって悩みの一つを減らすことに繋がります。

飲食店においては、「死亡事故など関係のない話だ」と思っている人もいるかもしれません。しかし飲食店でも、亡くなる人はいます。特に経験の浅い人に多く、飲食店関係の労災のデータでは、「経験3年以内」という層が死亡者の60パーセント近くを占めています。また、年齢も~40歳までが全体の50パーセントという数字もあがっています。
若い層、年の浅い層については特に気を付ける必要がありますし、また前述したように「小さなお子さんなどがいる家庭」に対する温情処置も考えた方がよいでしょう。