飲食店と労災~飲食店の労災の実態・発生状況

飲食店だけでなく、あらゆる職業において、一度は耳にすることになる「労災」。この「労災」の基礎的な知識と、そして現在の飲食店における発生状況とその実態について見ていきましょう。

まずはおさらい、「労災」の正確な定義について

「労災」という言葉は、だれもが耳にしたことのあるものです。そして、字面からも比較的「どのようなものか」がイメージしやすいものだと言えるでしょう。
しかしここでは、まずは基礎として、「そもそも労災とは何か」という定義から考えていきます。

「労災」とは、正式名称で「労働災害」と呼ばれるものです(以下は「労災」で呼び方を固定)。また、現在は「労災=労働災害によって出てしまう経済的な損失などを埋めるために行われる、国からの保険金やその制度」という意味合いで使われることもある単語です。

労災は、「労働が原因となっておきたけがや病気のときに、お金が支払われる」という制度です。飲食店の経営者として知っておいてほしいのは、この「労災」という制度は、正社員に対してだけでなく、アルバイトやパートといった立場の人であっても適用される、ということです。労働者が1人でもいるのであれば必ずこの労災の手続きをしなければなりませんし、これは義務となっています。また、掛け金を負担するのは労働者側ではなく、飲食店側です。

また、「どこまでからどこまでが労災の範囲か」ということについては、なかなか区切るのが難しいところであり、しばしば裁判などでこれらは争われています。もっとも、労災という性格上、あくまで対象となるのは「労働を理由としたもの」であり、まったく関係のない病気やけが(休暇中の旅行先でけがをした、などのケース)は労災の範囲対象外となります。

労災の実態について

さて、この「労災」ですが、一番起こりやすい業界はやはり「製造業」です。平成17年の段階では、製造業での労災認定を受けた人は40000人近くにも登っていました。また、「建設業」でも20000人を超える人がこの「労災」の対象者となっています。

ちなみにこれは、「休業が4日以上に及んだけが、もしくは死亡者」というくくりで、厚生労働省がとったものです。つまり、かなりひどい労災について取り上げたデータです。建設業などは高所で作業するケースも多く、このような数値になっているのかもしれません。

ただ、平成17年にはこのように非常に多くの人が労災認定を受けていた製造業・建設業ですが、時間が経つに従い、これは改善されていきます。時に平成21年のときには、製造業・建設業ともに被害者の数が激減しています。製造業は30000人を大きく割り込むことになり、建設業もまた20000人を大きく割り込むほどにまで状態が改善しました。
多少の増減は繰り返していますが、平成27年の段階で、製造業は平成17年と比較して28.、1パーセントの、建設業は31.9パーセントの改善がなされ、大きく減って煎るのです。

飲食店の労災の実態とは

では、肝心の「飲食店」の場合はどうなのでしょうか。
製造業や建設業に比べて労災認定される可能性や、重いけがや病気をすることの少なそうに見える飲食店では、実際に、その被害者の数は非常に少ないと言えます。平成17年の段階では3000人以下となっており、製造業の10分の1以下です。

しかし、だからといって、「飲食店は安全だ」というわけではありません。

製造業や建設業が徐々に労災人数が減っていっているのに比べて、飲食店での労災は、「右肩あがりに」急成長を遂げていってしまっているからです。平成17年と比べて平成27年のデータではなんと増加率が21,6パーセントとなっています。

飲食店で多いけがについて

では、飲食店で多いけがというのはどのようなものなのでしょうか。

全体の4分の1以上を占めるけがの種類は、2つあります。
まず、第1位の「転倒」。これが全体の27.7パーセントです。
第2位は「切れ・こすれ」で、これが全体の25.4パーセントです

「飲食店」と言ってもその業態はさまざまですが、この2つは、「配達サービス」を除くすべての部門(ファーストフード/「全体」「ハンバーガー」「丼物」に分けられる、チェーン系列/「全体」「ラーメン」「回転ずし」に分けられる、ファミリーレストラン・チェーン系カフェ・持ち帰り飲食サービス・チェーン系居酒屋)で上位3位以内に入っているものです。

そして、3位は「高温や、あるいは冷たすぎるものとの接触」がきています。これが14.6パーセントです。この3つを合わせると、全体の67.7パーセントを占めることになり、多くの人が、このようなかたちでけがをしていることがわかります。これらは飲食店を営んでいくうえで基本の行動であり、避けては通れないものです。しかし同時に、「日常的な行動」になっているからこそ、つい油断が出たり、手順を省略可したりしようとしてしまいがちなものでもあります。