飲食店を開業する際に知っておくべき節税の話

飲食店を開業する際に法人化するべきか悩まれると思います。詳しくは別の記事でも説明していますが、率直にお勧めなのはまず個人事業主で始めることです。この記事では節税という視点で法人化について説明していきます。

節税にはいろいろな方法がありますが、ここでは飲食店を開業される方が対象ですので、投資のように大きな金額を動かすことは想定しません。利益が小さい飲食店で、少しでも手元に現金を残すために出来ることに絞ってお話しします。

利益を出し続けること

最初に前提として知っておくべき事は、飲食店を開業したなら出来る限り利益を出し続けなければならないということです。飲食店というのは最初に投資をして始める事業です。ほとんどの人が銀行借入をして始めることになります。そして2店舗目の出店や既存店の改装など、いずれ再び投資が必要な時期がきます。銀行がお金を貸すかどうかの判断として、もっとも重視しているのが利益です。銀行への返済というのは利益から行われるものであり、利益が出ない事業は借入を返済できない事業だということになります。

最初にお金を借りてしまえば、あとは当分借りることはないと思いがちですが、そんなことはありません。必要なときに銀行から追加融資を受けられるように、常に利益は出し続けていく必要があります。

節税というと、利益を減らして税金を収めずにすまそうと考えがちですが、必要以上に利益を減らして赤字にしてはなりません。よく、赤字のほうが税金を収めずに済むから良いなどという人がいますが信じてはいけません。いざという時に銀行に協力してもらうことも出来なくなり、本末転倒となりますので注意してください。

経費と税金との関係

サラリーマンと異なり、個人事業主や法人は経費を使うことができます。支払った費用が経費として認められれば、その分だけ利益が減りますので納税額は小さくなります。例えば、仕入れに行くためにタクシーに乗って1000円払ったとします。1000円ぐらい面倒だからいいや、と自腹を切った場合、あなたは所得税を支払った後の手取りから1000円を払います。それはすでに約2〜30%の税金を支払って1000円を手に入れているお金です。逆算すると1200円以上がこのタクシー代のために出費されているわけです。

本来、会社の経費であるべきものを個人で支払いましたので、その分会社の利益が1000円増えます。1000円利益が出れば約25%の事業税を収めることになりますので、決算後にさらに250円の税金を収めなければなりません。もしきちんと領収書を貰って経費として処理すれば税金はかかりません。会社から無くなるのは1000円だけで済みます。経費精算をしなければ会社やあなたのお金は1500円近く失われます。消費税を含めるとその差はもっと大きくなります。

節税とは、収めなければならない税金をごまかすことではありません。本来、収める必要のない税金を収めることが無いよう、正しく計算することが大切なのです。

法人と個人事業主での所得税の違い

個人事業主と法人では、所得税の計算方法が違います。法人の場合、毎月給与を自分に支払います。給与として支払った額に対して所得税を収めます。その法人が黒字か赤字かに関わらず所得税は発生します。これがサラリーマンの所得税のイメージでしょう。

個人事業主の場合は違います。個人事業主は、自分に対して給与を支払うという考え方がありません。1年間の売上から仕入と経費を差し引いた残りの全てが、自分への給与、つまり所得となります。飲食店の売上から毎月一定額を自分の口座に給与として振り込んでいるつもりかもしれませんが、これは給与ではありません。そもそも個人事業主の場合は、飲食店のための銀行口座も個人のための銀行口座もどちらも自分の名義です。給与として振り込んでいるつもりでも、会計上はふたつの自分の口座の間でお金を動かしているだけなのです。

一年間の決算を行い、飲食店として赤字になったとします。その場合、所得税はかかりません。先ほどのように毎月自分の口座にお金を振り込んでいたとしても、所得税はかからないのです。

逆に、飲食店が大成功して3千万円儲かったとします。法人の場合、自分に年間900万円の給与を支払っていたとして、所得税は20%程度です。基礎控除というものがあるので、だいたい納税額は100万円強でしょう。残りの2100万円は法人の利益となります。これには25%程度の事業税がかかりますので、500万円強を納税することになります。合計で700万円弱の税金がかかります。

これが個人事業主だった場合、3000万円はすべて個人の所得となります。個人の場合、1800万円を超えると40%の税金がかかりますので、基礎控除を入れても納税額は1000万円を超えてしまうのです。

このように、利益が少ない内は個人事業主のほうが税金が少なく、利益が大きくなると法人のほうが税金が少なくなるのが日本の税金制度です。

飲食店を開業した初年度は開店のために購入しなければならない物品等も多く、多くの経費を使うことになります。このため利益はかなり少なくならざるを得ません。また、開業当初は事業のやり方も良くわからず、利益を出しにくいものです。ですから、飲食店の開業時はまず個人事業主で始め、軌道に乗ってから法人化するのがおすすめです。