「これを持ち帰らせて」に、飲食店はどう対応する?~食中毒問題と実際の例

「持ち帰りを前提としたメニュー」を組んでいる飲食店は、決して珍しくはありません。持ち帰りのお寿司などはその好例と言えるでしょう。

また、「食事が余ったから持って帰らせてほしい」というのは、飲食店を経営していれば、1度か2度は耳にすることになる「お願い」でもあります。
しかしこのときに問題になるのが、「食中毒」です。

食中毒問題は決して他人事ではない

「食中毒がどこで起こっているのか」の詳細を調べた平成20年のデータでは、「飲食店」が圧倒的1位をしめており、これが60パーセント以上となっています。続く「家庭」が14.5パーセントであることを考えると、45パーセント以上も「飲食店」の方がリードしているのがわかります。
ちなみに3位は「旅館」、4位は「仕出し屋」です。

また、お店で食中毒が起こった場合、その患者数は、家庭でのそれと比べ物になりません。
平成0年のデータでは、「家庭で食中毒が起きた」というケースでの患者数は446人にとどまっていますが、「飲食店で起きた食中毒」の場合は数が非常に多く、12000人を超えています。

意外に思われるかもしれませんが、被害者の数がもっとも多いのは、なんと12月。ものが傷みやすくなる夏場や、じめじめとした湿気が食中毒に結びつく梅雨でもなく、冬場である12月の方が食中毒の発生率が多いのです。特に、冬場~春にかけては、ウイルスによる食中毒が多くなります。反対に、5月から10月くらいまでは、細菌を原因とする事件が多くなっています。

「何が原因で食中毒が起きるのか」というのは、その菌によっても異なります。ただ、いずれの場合でも、「温度管理ができていなかった」「適切ではない環境で放置してしまっていた」ということが1位になっています。腸炎ビブリオでは全体の40パーセント以上が、サルモネラ属では全体の34パーセントが、「これが原因である」としています。

お持ち帰りの危険性

このように、飲食店と食中毒は切っても切り離せない関係にあります。

きちんとした管理を心がけていてさえ、ちょっとした手抜かりやうっかりミスにより、食中毒は発生するのです。

しかしこれが、「お持ち帰り」となるとまた大きな問題が出てきます。

「店に食べ物がある間」というのは、従業員が気を付けており、かつきちんとした手順で食材や料理を扱っていれば、食中毒になるリスクは少ないと言えます。
ただ、「お持ち帰り」にしてしまうと、そのような「管理」が追い付かなくなります。包んでお渡しし、お会計をした後は、その持ち帰った料理がどのように扱われるのか、店側にはわからないのです。
たとえば、その料理を真夏の暑い車内においておくかもしれません。「後で食べよう」と思っていたのに冷蔵庫に入れ忘れていた、ということもあるかもしれません。
このような状況があったとしても、店側はそれを感知することができません。

さらに難しいのは、「お持ち帰りで持ち帰って食中毒が起きた場合、その責任のすべてから、飲食店が逃げるのは難しい」という問題があります。
専門家のなかには、「持ち替えったものを食べて食中毒になったとしても、それは自己責任である。飲食店がそれを完全に管理することはできない」として、店側の立場になって論じる人もいます。
しかしその場合でも、「お渡しする時点ですでに食品に、食中毒の原因が入っていた」という場合は店側が賠償責任を負わせられることがあります。また、同じような弁護士の立場でも、「たとえお客様自身が自分で食べ物を梱包し、自己責任で持ち帰っていたとしても、食中毒が起きた場合は、店側も相応の負担を負うことになる」としている人もいます。

そのため、実際に治療費の請求ができるかどうかはおいておくにしても、「飲食物を持ち帰ることによって、飲食店側が治療費の請求を受けるリスクはある」と言えます。

実際の例と飲食店側の自衛

たとえば、東京都の町田市では、平成25年の3月に、お寿司屋で食中毒が起きたという報を報じています。
これは、「該当のお寿司屋で飲食をした、もしくはそこのお寿司屋で持ち帰りを依頼した」という42名に食中毒の症状が見られたものであり、ノロウイルスが原因でした。
入院患者はいなかったものの、実に23名の人間が診察を受けることとなったのです。

これの場合、「持ち帰ったもの」と「その場で食べたもの」のどちらが原因であったかは判然としていません。
また、この事件では、町田市はそのお寿司屋の具体的な名前を挙げることを避けています。しかし5日間の営業停止処分が下されており、飲食店側にとって大きな痛手となる処置であることには間違いありません。

食中毒が起きると、飲食店には確実にダメージが行きます。もちろん店内での飲食にも気を付けるべきですが、店側の管理が及ばない「持ち帰り」についてはさらに慎重な姿勢が求められます。「ナマモノだから、食中毒が増えている季節は提供しない」などの対策も考えた方がよいかもしれません。