剣菱(けんびし)[剣菱酒造:兵庫県]

伊丹酒の味わいを今に伝える

永正2年(1505年)創業。優に500年以上の歴史を有する同蔵元は元々、その前身にあたる「稲寺屋」が伊丹市で酒造りを始め、昭和に入ってから神戸市東灘区に移転して灘の酒「剣菱」を醸すようになりました。かつて「剣菱」は、将軍家に御前酒として献上されたほか、かの赤穂浪士が勝利を祈願する出陣酒としたなど、その名は歴史に刻まれています。

「神秘の水」で醸す「剣菱」の味わい

剣菱酒造が仕込みに使う水は、灘の酒造りに欠かせない「宮水」です。天保11年(1840年)に発見された「神秘の水」は、西宮神社(兵庫県西宮市)の周辺一帯から湧き出しています。水質はリンの含有量が多く、鉄分が少ない硬水で、「剣菱」をはじめとする灘五郷(なだごごう)の酒造りに広く使われています。

契約栽培農家との信頼関係を第一に

酒造好適米の最高峰とされる「山田錦」。兵庫県はその全国作付面積のおよそ8割を占めるなど、「山田錦王国」といっても過言ではありません。代表銘柄「剣菱」などに使う酒米は地元産の「山田錦」や「愛山」など。契約栽培農家との信頼関係を第一に、最高峰の酒米を調達しています。現在、県内約20の農村が同蔵元と契約し、高品質の酒米を栽培しています。

昔ながらの道具を次世代に継承

剣菱酒造は、近代化された工場においても古の酒造りを踏襲し、昔ながらの道具を使って酒を醸しています。例えば、酒米を蒸す「甑(こしき)」、麹づくりに欠かせない「麹蓋(こうじぶた)」、熱湯を入れて酵母を育てる「暖気樽(だきだる)」、堅い木でできたスコップのような「ぶんじ」、仕上がった酒を入れる杉製の「樽(たる)」などさまざまです。

特筆したいのは、昔ながらの道具をつくる職人を社員として雇っていること。暖気樽をつくる「暖気樽職人」や、樽酒に菰(こも)を巻き付ける「菰職人」が陰ながら活躍し、灘の酒造りを支えています。

「剣菱」の熟成貯蔵にも人の技が生きる

剣菱酒造には計4つの仕込み蔵があり、それぞれに蔵人が違います。高品質の酒造りは、仕込みのみならずていねいな貯蔵が欠かせません。同蔵元ではその年の冬に仕込んだ酒を、最低でも夏まで貯蔵熟成させ、米のうま味と香りが十分に引き出された秋ごろになって、ようやく出荷しています。

代表酒「剣菱」ブランドの数々

代表酒「剣菱」をはじめ、酒米の酒類や熟成期間などによって「黒松剣菱」「極上黒松剣菱」「瑞穂黒松剣菱」「瑞祥黒松剣菱」などのラインナップがあります。